パン作りの材料

「全粒粉」ってなに?

小麦、全粒粉

スーパーやパン屋さんでよく見かける「全粒粉」という言葉。
「栄養が高いっていうイメージはあるけど、おいしいの?」「普通のパン(小麦)とどう違うの?」などといった疑問にお答えするとともに、全粒粉について解説していきたいと思います。

全粒粉とは

まず初めに、全粒粉は一般的な白い小麦粉と一体なにが違うのでしょうか?
全粒粉と白い小麦粉の違いを、小麦の粒から考えていきたいと思います。

小麦粒の構造

小麦は、外殻胚乳胚芽の三つの部分から成り立っています。

また小麦は稲とは違い、もみ殻に包まれているわけではなく、実がそのまま外殻を形作っています。
そのため、お米のように比較的簡単に精米ができるわけでは無く、製粉という特別な技術や機械と、手間・時間がかかる作業が必要になります。

外殻とは、一般的に”ふすま”と呼ばれる小麦の外側にある、硬い殻のことです。
全体の13%を占め、その成分は繊維質、タンパク質、灰分(カリウム、カルシウム、リン、マグネシウムなど)です。

胚乳は、小麦粒全体の85%に当たります。
白い粉になる部分で、成分はデンプンとタンパク質です。

胚芽は、小麦粒全体でたった2%ほどしか含まれていない部分です。
しかし、ビタミンB1やビタミンEを多く含んでいて、非常に栄養価が高いです。
胚芽は栄養が豊富なので、この部分を抽出して、他の食品や薬品などに添加して有効利用されたりもします。

小麦粒構造
小麦粒の構造

全粒粉とは

では、全粒粉とは一体何を指すのでしょう?
それは、小麦粉全体を粗挽きにした粉を指します。

つまり、外殻・胚乳・胚芽がすべて含まれる粉のことです。
別名グラハム粉とも呼ばれます。

逆に白い小麦粉は、外殻や胚芽部分を含まない、胚乳のみの粉ということになります。
(胚芽を含む白い小麦粉もあり、一概にこれということはできないです。)

灰分(かいぶん)とは

小麦の外殻(ふすま)のところで出てきた、「灰分」について解説します。

灰分とは、小麦粉を燃やしたときに残る「灰」の部分のことです。
成分は、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄などのミネラル分で、外殻(ふすま)や胚芽に多く含まれます。

灰分の量は、小麦粒の外側になるほど増します。
つまり、灰分が高いものは、胚乳の外側の部分がより多く含まれることになります。

灰分量の多い小麦で作るパンの特徴

灰分は灰色の色素を持つため、灰分の量が多い小麦粉で作ったパンは、灰色がかったクラム(内相)になります。

また、灰分はパン酵母に養分を与え、生地の発酵を助けます。
そのため、全粒粉のように灰分量が多いものでは、一般的な白い小麦粉に比べて、発酵が早く進みます。

パン作りに使用する小麦粉の場合、灰分の量が全体の0.45〜0.55%くらいのものが一番バランスが良いとされています。
小麦粉の袋の成分表に記載されているので、一度チェックしてみてくださいね。

小麦粉の等級とは

小麦粉を分類するには二通りの方法があります。

一つは、小麦粉のタンパク質の量の違いで、タンパク質の多いものから強力粉、中力粉、薄力粉と区別しています。

もう一つは、小麦粉中の灰分の割合で、灰分の割合の少ないものから特級粉、1等粉、2等粉、末粉と等級というもので区別します。

これは、小麦を挽いて粉にする過程で、外皮や胚芽の混入が少なく、灰分の値が低いものから、1等粉、2等粉、3等粉、末粉と等級が分かれます。

つまり、より白く、栄養が少ないものの方が等級が高いということになります。

また、面白いのは、小麦の品種が同じでも、製粉の違いによって灰分の量が変わるため、同じ品種の小麦なのに違う商品として売られるという点です。

ちなみに、フランスでは小麦粉は灰分の量によって大別されていて、日本のタンパク質の含有量による分類とは大きく異なります。

全粒粉のパンってどんな味?

全粒粉を使ったパンは、小麦粉の味や風味を強く感じられ、自然な甘味とうまみがあり、さっくりと歯切れが良く、少しざらっとした舌触りです。
また、少量の酸味を感じ、さっぱりとした味わいで、噛みごたえのある少し重たい食感になります。

一方、全粒粉に含まれる「ふすま」は、ガラス繊維で硬いため、食感や口当たりが若干悪くなります。(逆に、それがアクセントとなり良い場合もあります。)
また、消化に悪いため食べすぎるとお腹がもたれます。(少量なら全く気にならないので安心してください。)

家庭でパンを作る際も、全粒粉を少量入れるだけで全然違った味わいになります。
栄養価も高くなるので是非作ってみてください。

家庭で全粒粉を使ってパンって作れる?

全粒粉だけでパンを作ることはあまりおすすめしません。

ふすまや胚芽部分の割合が多くなると、殻などの硬いものが生地中のグルテンを切ってしまうため、ガスをうまく保持できず、非常に膨らみが悪くなってしまいます。
そのため、多くのパン屋さんでも、白い粉と混ぜて使用したり、ふるいで振るってふすまを取り除いてから使用したりします。

個人的には、多くても全粒粉が半分、白い小麦粉の割合が良いかなと思います。

こちらで”全粒粉”を使ったレシピを紹介しています。

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まとめ

全粒粉の特徴についてまとめると

  • 食物繊維やミネラル、ビタミンB1やビタミンEが豊富
  • 小麦の味や風味を強く感じられる
  • 自然な甘味やうまみが増す
  • さっくりと歯切れが良く、少しざらっとした舌触り
  • 噛みごたえのある少し重たい食感
  • 消化に悪いため、食べ過ぎには注意
  • 家庭で作るときは、多くても白い小麦粉半分、全粒粉半分がおすすめ
  • 気泡が小さく、ボリュームが少ないパンになる

以上が全粒粉の解説になります。

全粒粉には短所もありますが、それよりも多くの長所があります。
是非一度、全粒粉を使って自然派系のパンを作ってみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料

パン「こつ」の科学:吉野精一 著
BREAD:ジェフリー・ハメルマン 著


パン「こつ」の科学―パン作りの疑問に答える

BREAD―パンを愛する人の製パン技術理論と本格レシピ