”パンチ”ってどんな意味があるの?

パンチ

ここでは、「なぜパンチをするのかよく分からない。」「どうしてパンチをするレシピや、しないレシピがあるの?」といった疑問にお答えしたいと思います。

パンチとは

パンチとは、一言で言うと「発酵の途中でガスを抜く」という作業のことです。
具体的には、次のような手順で行います。


STEP.1
こね上げた生地を発酵させる(一次発酵)

STEP.2
発酵の途中で生地を容器から取り出す

STEP.3
生地を押すように叩いてガスを抜く

STEP.4
生地を”左右に”三つ折りにする

STEP.5
生地を”上下に”三つ折りにする

STEP.6
生地を容器に戻す

STEP.7
再び発酵させる(一次発酵の続き)

このSTEP.2〜6の作業を”パンチ”と呼びます。

パンチの意味

パンチをする目的は主に3つあります。

パン生地中の気泡を整える。
生地を叩くことによって、生地中の気泡を小さく揃えます。これによってきめが細かい生地になります。

パン生地中のグルテンを強化する。
生地を叩いてつぶした後、生地を折りたたみます。これによってグルテンの繋がりを強くし、焼いた時によく膨らむようにします。

発生したガスを抜き、新たに空気(酸素)を入れる。
パンチの一連の動作によって、イーストの活動(発酵)によって発生したガス(二酸化炭素)を抜き、さらに新しい空気(酸素)を送り込むことで、イーストの活動や増殖を活発にします。
これによって生地の発酵をより促し、焼いた時にパンをより膨らませます。

パンチをするときの注意点

パンチのガス抜きは真上から押すように叩いて行います。また、生地は折り紙を折るようなイメージで、丁寧に折りたたんでいきます。この時に、生地を捏ねてはいけません。
もし捏ねてしまうと、生地中のグルテンを壊してしまいます。すると生地はうまく膨らむことが出来なくなってしまうので注意しましょう。

生地の折りたたみ方
広げた状態の生地
まず右側3分の1を折りたたむ
次に左側3分の1を折りたたむ
その後上下に3分の1ずつ折りたたむ

パンチをした方がいいパン、しない方がいいパン

どうして同じパンを作る場合でも、レシピによってパンチの工程があったりなかったりするのでしょう。

○パンチが必要なパン

上に持ち上げたり、ボリュームを出したいパンにはパンチが有効になります。
例えば、食パンや菓子パン(あんぱんやクリームパンといった甘いパン)、ブリオッシュなどです。

これらのパンは、「大きく膨らませることでパンの内相を柔らかくしたい」という目的があります。
そのため、タンパク質の多い強力粉を使い、またイーストがフランスパンなどのリーンな生地に比べて多めに配合されています。

そのため、パンチによって「グルテンの構造を強くする」、「イーストの活動を活発にする」ということは、大きく膨らませたいということにおいて、効果的かつ相乗効果を産むことができます。

○パンチが必要でないパン

家庭で作るレシピの場合

家庭で作るレシピの多くは、手ごねでも作りやすく、時間も短時間でできるようになっています。

具体的には、”外国産のタンパク質の多い強力粉”を使い、イーストを多めに配合し、発酵の温度を高めに設定する、といったことをしてあります。
これによって、最初からグルテンが強く、イーストの発酵や増殖も盛んな生地にすることが出来ます。
そのため、わざわざパンチといった手間と時間をかけなくても、よく膨らむパンにすることが出来ます。

(つまり、手ごねだとグルテンの形成が十分でない場合がほとんですが、それをイーストの発酵力や外国産の小麦の力で無理やり補っているということになります。)


column:イーストを多く入れることの注意点について
ここで一度、イーストを多くいれるということについて考えていきたいと思います。

イーストを多く配合することはパン作りの作業を短く簡単にしますが、小麦本来の味や旨味、甘みといったものを損なってしまう可能性があります。

そのため、時と場合によってレシピをうまく使い分けたり、イメージする味と作業性のバランスを考えてイーストの量を調節する、といったことが必要だと思います。

筆者は、しっかりとゆっくり時間をかけて発酵させることで、小麦粉の中に元々含まれているいろいろな微生物が活動し、小麦本来の「甘み」や「うま味」が形成されると考えています。
(具体的には、乳酸発酵による生地の熟成など)

そのため、手間はかかっても、ちゃんと時間をかけて丁寧に作った方が美味しくなると考えています。
(もちろんそうは言っても、そんな時間なんてなかなかとれないことがほとんどですが・・・)

リーンなパンの場合

ガスをあまり発生させない生地のとき、パンチをしない方がよい場合があります。

バゲットやカンパーニュといったリーンなパンは、タンパク質の多い強力粉を使わなかったり、イーストを少ししか使わなかったり、またはイーストではなく天然酵母を使っているということがあります。

そのようなリーンなパンの場合、発酵の段階で生地があまりガスを発生させず、またグルテンも少ないため多く蓄えることも出来ません。
そのため、せっかく蓄えたガスをパンチによって抜くことは、生地にとっても作業性にとってもよくありません。

そのため、そのようなリーンな生地の場合には、パンチをしないか、またはパンチといっても、”ガスを抜かないように軽く折りたたむ程度”といった、”グルテンの強化”だけを意識したものにします。

まとめ

パンチは、「パン作りにとって大切な作業のひとつ」であり、パンチをすることで、パンをより美味しくつくることが出来る。

しかし、それよりも自分の都合(TPO)に合わせた作り方をすることが大切。

以上がパンチをする意味の解説になります。

パンチをすることで手間がひとつ増えますが、パンチをすることでよりおいしいパンを作ることが出来ると思います。ぜひ実践してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考図書

パン「こつ」の科学 吉野精一 著
パンの世界 基本から最前線まで 志賀勝栄 著

二冊ともレシピ本ではありませんが、”パン作りにおける疑問”を解消してくれる本です。「この材料とこの材料は何が違うのか」「どうしてこの作業が必要なのか」など、パン作りをもっと理解したいという方におすすめの本です。


パン「こつ」の科学―パン作りの疑問に答える

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

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