パン作りにはいくつかの製法があります。ストレート法や中種法、前発酵種法や湯種法などなど・・・
ここでは、その中でもパン作り初心者の方には是非実践してほしい【オートリーズ法】というものについて解説していきたいと思います。
もくじ
オートリーズとは
「オートリーズ」とは、パン作りの製法の一つです。
どんなものかというと、始めから全ての材料を合わせるのではなく、「始めに小麦粉と水分だけを合わせておく」という製法です。
そして、常温で数十分程度寝かせた後、残りの材料を合わせ、捏ねる方法のことです。
(注:寝かせる時間は作る人によって様々です。一晩や一日寝かせるパン屋さんもあります。)
これだけ聞くと、「たったそれだけ?」「それって何か意味あるの?」などと思われるかもしれませんが、これをやるだけで作業が楽になり、おいしさも格段にアップします。
オートリーズ製法でつくったパンのレシピはこちら


オートリーズ製法の作業の流れ
オートリーズ製法を使ったパン作りの全体の流れは次のようになります。
- 小麦粉と水分を合わせ、常温で数十分寝かせる。(オートリーズ)
- 塩やイースト、その他の材料を合わせ、こねる
- 一次発酵
- 分割・丸め
- ベンチタイム
- 成型
- 二次発酵
- 焼成
この「1」で行う作業をオートリーズといいます。
オートリーズもっと詳しく
オートリーズ法は、始めに粉と水だけを合わせ、常温で数十分寝かせます。
この生地を休ませている時間に粉に水がしっかりと浸透していきます。
これによって、”実際にこねるという作業をしなくても、グルテンが形成がされていく”のです。
また、この生地休めの間に、生地の伸展性が向上したり、小麦粉の中に含まれる”酵素”の働きによって甘みやうま味が増すという効果もあります。
この生地休めの後、塩やイーストなどの残りの材料を加え、こねていきますが、このとき”すでにグルテンがある程度作られている”ため、”こねる時間をかなり短くする”ことができます。
このように、オートリーズ法はこね時間を少なくすることができるだけでなく、パンの焼き上がりのボリュームを増やし、パンに自然な甘みやうま味を加え、口溶けをよくするという効果があります。
どうして塩やイーストを後で加えるの?
次に、塩とイーストを後で加える理由について解説します。
①塩
塩には、グルテンを引き締める性質があります。
これは、オートリーズによってグルテンを発達させるのを防いでしまうからです。
②イースト
パン酵母(イースト)が、オートリーズで加えられないのは、単純に発酵が進んでしまうこともありますが、
仮にパン酵母(イースト)を入れた場合、発酵が起こり、それによって生地の酸性度が高くなります。
これによって、塩と同様に生地が引き締められ、グルテンの発達を防いでしまうからです。
酵素の働き
酵素とは、簡単にいうと「食物を分解する働きを持つ物質」のことです。
例えば、唾液に含まれる消化酵素(アミラーゼ)は食物中のデンプンをブドウ糖に変える働きがあります。
小麦は、自分が持っている酵素によってデンプンを分解し、糖を作ります。
また、その他にも酵素には、タンパク質を分解する等といった様々な働きがあります。
このように、酵素によるデンプンの分解によって糖が作られるため、酵母(イースト)のエサが増えます。
これによって、イーストの活動がより活発になり、パンのボリュームが増します。
また、酵素の働きによって、小麦由来の自然な甘みが増えるとともに、焼き上がりの色づきも良くなり、口溶けも良くなります。
まとめ
まとめると、オートリーズには
- トータルのこねる時間が短くなる
- 焼き上がりのボリュームが増し、色づきも良くなる
- パンが柔らかく、しっとりした食感になる
- 小麦本来の甘味を引き出す
- 口溶けを良くする
という効果があります。
このように、オートリーズとは簡単な作業なのですが、
それをやるだけで、たくさんの効果があります。
是非オートリーズ法を使って、よりおいしいパンを作ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考図書
BREAD:ジェフリー・ハメルマン 著
パンの世界:志賀勝栄 著
BREAD―パンを愛する人の製パン技術理論と本格レシピ
パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)